生前贈与の手法について1
相続税対策としては様々な生前贈与の手法があります。
それらを紹介していきたいと思います。
今回は暦年贈与と相続時精算課税制度についてご紹介したいと思います。
①暦年贈与は年間110万円の基礎控除額に相当する分を贈与する手法です。暦年贈与は親族でなくとも可能です。また、回数にも制限がありませんので、年を分けてよく使われる手法ですね。なお、相続発生前3年以内の贈与財産は生前贈与加算の対象になるので注意が必要です。
②相続時精算課税制度は比較的新しい税制です。贈与者は60歳以上の父母、祖父母であり、受贈者は20歳以上の推定相続人である直系卑属、推定相続人でない孫になります。
これについても年限なく複数年にわたって利用できる特別控除額2500万円を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出することになります。この贈与財産は相続時に組み戻して相続税から控除することになります、控除しきれない場合は還付を受けることができます。
贈与税は累進課税制度なので一度に多額の資産を贈与する場合はこの制度が有効です。
例えば、自社株の贈与にはこの制度を利用することが多いようです。
一般的には暦年贈与の形態がよく使われますね。贈与に際しては、契約書や資金の流れが明確にしておいた方が後々面倒に巻き込まれなくてよいと思います。
相続空き家の特例
今日は空き家に関する税制の紹介です。
日本社会が人口減少で空き家問題が課題となって久しいですが、空き家相続に関する税優遇制度もあります。
これは、S56年5月31日以前に建築された被相続人が一人で居住していた家屋(区分所有物除く)およびその敷地を譲渡した場合に、譲渡益から3000万円控除することができるというものです。
これには以下の適用要件があります。
①相続の日から3年後の12月31日までの譲渡であること。
②譲渡対価の額が1億円以下であること
③相続時から譲渡時まで事業用・貸付用・居住用に供されていないこと
です。
つまり、相続空き家は基本的に相続後3年後までに譲渡した場合には譲渡益から3000万円控除することができるということです。
空き家となる住居を相続することになった場合は3年以内に売却したほうがよさそうですね。
自宅(実家)の相続に利用できる特例
相続において、必ず絡んでくる財産が自宅(実家)です。
自宅(実家)を相続する場合に適用できる特例の一つをご紹介したいと思います。
「小規模宅地等の評価減」です。
これは被相続人(亡くなった方)が居住していた住宅の敷地(宅地等)を
①配偶者が取得した場合、
②同居の親族が取得し申告期限まで引き続き居住し、かつ保有している場合
③配偶者または同居親族がいない場合において、その宅地等を取得した親族が、相続開始前3年以内に国内にあるその者またはその者の配偶者所有の家屋に居住したことがなく、かつ、申告期限まで引き続きその宅地等を保有している場合に
その評価面積の330㎡までが80%減少するというものです。
(330㎡といえば100坪です。住宅あたり敷地面積は80坪程度と言われていますので、通常の住宅であればしっかり適用されますね。)
仮にあなたのお父様が亡くなったとした場合(縁起でもないですが)を考えてみますと、
①あなたのお母様が住宅を相続した場合、
②あなたが同居していたお父様から相続した場合、
③お母様が先に亡くなっておられ、お父様が一人暮らしされている場合で、相続開始前3年以内にあなたや奥様名義の住宅に居住したことが無い場合、
本件が適用されることになります。
80%減ですので、坪20万円の土地だと2000万円、これが400万円の評価まで減額されることになるので、これは使わないといけない特例ですね。
ただし、自己所有の居宅に住んでいないことが一定の要件となるので、適用範囲は絞られそうです。